建築再読-J.02 日光東照宮

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建築再読-J.02 日光東照宮
「異端の歩き方」
定説を外れた異端の視点で自由に想像して読み返しています.
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日光東照宮
 /甲良宗広 等/日光市/1636年頃(江戸時代初期)
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画像
 Google Earthの画像です.
 東照宮の背後には
 日光の奥深い自然が
 あります.
 解像度の低い地域なので
 Google Earthに近景は
 ありません.(当時)

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 東照宮の空間は、
 前半の「東側エリア」と
 主空間の「西側エリア」に
 分けられます.

 それぞれに幾つかのステージが
 組み込まれています.
 それらは様々な空間装置で
 連結されています.






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 透視図的効果の強い
 「表参道」です.
 焦点に「石の鳥居」が
 あります.


日光の山中は滝も多く、自然界の精霊たちが集まりやすい環境だと
思います。
東照宮に向かって直進する「表参道」の透視図的効果の強い景観は、
精霊たちの住む奥深い世界にまで突き抜けているように見えます。
「表参道」がそこに導いているようなイメージが浮かんできます。

画像 j0205torii-hiroba.jpg
(左)鳥居が額縁になって次のステージを絵画にして見せています.
 鳥居の高さは9mです.
(右)「石の鳥居」と「正方形広場」付近の空間造形です.
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「表参道」の景観は「石の鳥居」を焦点にしています。
その手前まで行くと、鳥居の形を額縁にして、次に進むステージが
絵画のように見えてきます。
鳥居を通過する時は、CGのように、その絵画の中に入り込んでいく
ような錯覚が一瞬あり、面白い感覚を楽しめます。

鳥居は、異なる二つの世界を結合する装置です。
他方の世界を絵画にして見せる鳥居の額縁の演出は、異なる空間の
境界を通過する儀式的な緊張感を誘うような効果があります。

画像 j0207toshog06.jpg
(左)「正方形広場」のステージです.
 画面の中央に「石の鳥居」、右側に「五重塔」があります.
(右)やや小さめの「五重塔」(高さ35m.1817年再建)ですが、
 垂直性が強く感じられます.
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次のステージは「表門」前の「正方形広場」です。
「千人升形」と呼ばれる、ほぼ40m四方の空間です。
目の前が開け、爽快感があります。
直前に通り抜けてきた「狭くて薄暗い」「石の鳥居」空間は、
「明るくて広い」広場への入場を新鮮にする演出装置だったのです。

空間が「広い・狭い」や「明・暗」を繰り返すと、移動にリズム感が
生じてきます。
長い動線でも退屈しないで歩行することができます。

広場の左側の「五重塔」は、垂直性が目を引きます。
小振りな塔ですが、広場のスケールにちょうど良いと思います。
塔の垂直性は、空に向かう伸びやかな印象を広場に加味しています。

そして、塔の存在は、進行方向に直交する空間軸を造っています。
2軸の交差は、主軸の直進にブレーキをかける感覚があります。
長い直線軸を歩いてきた人は、ここで自然に足を止めるのです。

画像 j0209daikei-hiroba.jpg
(左)「表門」と石垣です.
 これまでの空間を区画する、新しいステージの結界です.
(右)台形広場は「東・西エリア」の接合ステージです.
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正面に立ちはだかるような壁のような石垣も「表門」の急な石段も、
停留を求める視覚的な効果は十分にあります。
しかし、2軸を直交させる空間構成の方が、気持に優しい暗示だし、
心理的にも自然だと思います。

しかし、この広場は、停留だけを暗示する空間ではないのです。
広場の北側2隅から、東の二荒山神社と西の社務所に向かう
2本の道が対角線状に延びています。
この対角線道路は、自然な停留空間の中に、次の動きを誘う感覚を
加味しているのです。

停留を誘う広場は、単に休憩の場として機能するだけでなく、
次の新しい世界に踏み入る前の、気持の準備のために用意された
空間だと思います。

画像 j0211toshog12.jpg
 「中神庫」と「下神庫」が左方向へのターンを指示しています.
 正面の灯籠の配列が、移動にリズム感を与えています.
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「表門」は額縁となって、右に「下神庫」、正面に「中神庫」の建つ
「絵画」を見せます。
それは、直進から左方向へのターンを暗示するスクリーンです。
さらに「中神庫」前の、灯篭の等間隔の配列が、左折の動線に
リズム感を与えています。

画像 j0213toshog22.jpg
(左)台形広場の奥からの見返し画像です.
 左から「上神庫」「中神庫」「神厩舎」が位置しています.
(右)「陽明門」階段からの見返し画像です.
 左から「上神庫」「神厩舎」「銅の鳥居」の位置関係です.
 広場の中間で「上神庫」と「神厩舎」が破風を向い合わせるので、
 そこに透明な塀があるようにイメージされます.
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左折しながら奥に細長い広場が少しずつ展開し、「明るくて広い」
ステージに出ます。
「狭くて暗い」「表門」は、この印象を効果的にする装置でした。

広場は奥にすぼまる台形の平面ですから、奥行感が強調されます。
動線が長い上に、さらに長く感じさせようとするのは、
広場を東西に感覚的に二分するためだと思います。

二分した広場の東側は、東照宮の「東列エリア」、「表参道」から
続く一連の直線空間の、その終端部です。
広場の奥の西側は、「西列エリア」、「本殿」を主軸とする主空間の
最初の部分です。
この台形広場は、「東列エリア」と「西列エリア」を連結するための
ステージなのです。

広場を二分しているのは「神厩舎」と「上神庫」です。
この二つの建物が妻破風を向い合わせにしているので、
そこに三角形屋根の透明な塀があるようにイメージされます。
この想像の透明な塀が、広場を東西に二分しているのです。

画像 j0215toshog13.jpg
(左)参道軸を右に外して「水屋」があります.
 その右側に「輪蔵」と「本地堂」の屋根が見えています.
(左)空間が右上りに転回していくモーメントが感じられます.
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台形広場は「水屋」を焦点にしています。
派手なデザインだから、小さくても目立ちます。
この「水屋」は参道の軸から少し右に外れて建っています。
そして、「水屋」から「輪蔵」「本地堂」の小・中・大の屋根が、
右上がりに続いているのが見えます。

「水屋」の軸の右外しと、3つの屋根の右上がり続きの景観は、
広場の空間が右上りに転回していくモーメントを予感させている
ように感じられます。

画像 j0217toshog19.jpg
(左)焦点の「水屋」は小さいので目立つように意匠されています.
(右)「銅の鳥居」を額縁にした「陽明門」の絵画的な景観です.
 対称性の強調は、東照宮の聖域性を表現しています.
 鳥居の高さは6mです.
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「水屋」の手前での右折は、事前に右上がりのモーメントの予感が
与えられていたので、スムースにターンできます。
右折すると、「銅の鳥居」が額縁となって、「陽明門」を絵画にして
見せています。
その「絵画」は、これまでとは違う、左右対称性の強い景観です。
これから先の東照宮の主たる聖域空間を表現しているのです。

画像 j0219toshog30.jpg
 装飾過多の「陽明門」は日光の自然と一体化したスクリーンです.
 その奥から自然界に棲む精霊たちが、現実の世界に顔を覗かせて
 いるように見えます.
 「陽明門」は高さ11m、間口7m、奥行4mです.

画像 「陽明門」と北極星を
 合成した画像です.
 夜は「陽明門」の真上に
 北極星が見えます.
 実際に体験すると、
 「陽明門」の軸を中心に
 世界が動いているように
 感じられるのではないか
 と思います.

「陽明門」は、構造が消されるほどの装飾過多の建築です。
霊獣などの彫刻が500体以上も装着してあります。
近代建築の合理主義の枠組みでは、無意味な悪趣味だと断定されて
しまうような装飾過多です。
何故これほど多くの彫刻で飾り立てるのか、疑問に思う所です。

装飾は「陽明門」をスクリーンとして見せているのだと思います。
装飾を過多にすることによって、「陽明門」を背景の日光の自然に
溶け込ませているのだと思うのです。

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 「陽明門」スクリーンの
 奥から霊獣が顔を
 突き出している
 イメージです.




自然界に同化した「陽明門」は、精霊の棲む世界と現実世界とを
接合するスクリーンなのです。
その奥からこちら側に、霊獣たちが様々な顔を突き出しているように
イメージされます。

さらに、霊獣たちの背後には、日光に棲む多くの精霊たちが連なって
いるように想像されます。
「陽明門」の様々な装飾色彩は、スクリーンの裏側にいる彼らの
ざわめく声の表現であるような気がします。

「陽明門」を通過する時は、想像の中とは言え、精霊の世界に
踏み入っている訳です。
「唐門」前広場に出た時の、想像と現実が混交した瞬間的な時間は、
自然界の豊かさ、東照宮の建築技術者や彫刻技能者に、大きな敬意を
表すべきだと思います。

画像 j0223toshog32.jpg
 霊獣たちがスクリーンから顔を突き出しているように見えます.
 金箔などの装飾は、精霊たちのざわめきのように感じられます.
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精霊は「大自然の記憶」であると説明されることがあります。
加えて、命あるものの化身であると言ってもよいと思います。

精霊を見ることはできませんが、精霊と波長を同調するようにして、
自由に想像することはできます。
むしろ想像することによって、人間は大自然の一部であり、自然に
生かされている奇跡のような現実を想うことができると思います。

「人間と自然が共存する」という言葉をよく聞きます。
しかし、人間は自然と肩を並べるほどに大きな存在ではない、
精霊たちのざわめきは、そうも言っているような気がします。
「陽明門」は、そうした一瞬の思索を用意した建築だと思います。

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 「唐門」前広場の
 空間軸の構成です.
 主軸に直交する副軸は、
 軸が長いし食い違うので、
 主軸よりも構成力は
 強くはありません.


画像 j0226toshog41.jpg
 「唐門」は、構造物というより、小彫刻を集積したオブジェです.
 「透塀」は、「拝殿」を垣間見せながら広がる、小彫刻・装飾群の
 ギャラリーです.
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「狭くてやや暗い」「陽明門」を通り抜けると、「明るくて広い」
「唐門」前の広場に出ます。
この広場は、「強く短い」主軸と「弱く長い」副軸が交差する、
横に長い空間です。

主軸は「西側エリア」の終端のステージを構成する強い軸です。
軸が短いのは、左右対称の「本殿」景観を見るよりも、
「唐門」の細部装飾の鑑賞を優先させるための誘導だと思います。

画像 j0228toshog42.jpg
 「唐門」広場の副軸を造る「神輿社」(左)と「神楽殿」(右)です.
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副軸は、向かい合う「神輿社」と「神楽殿」で造られます。
それらの正面が食い違っているので、軸は「神楽殿」の脇を抜けて
「奥社」に続く動線にスムースに連続しています。

副軸は「唐門」前での一旦停止を暗示しています。
軸が横に長いのは、「透塀」の装飾を鑑賞しながら左右移動する
ための動線を用意したからだと思います。

画像


 「奥社」の参道です.
 武士の空間らしい印象が
 あります.



「奥社」に続く石段は、自然の中を屈曲して急勾配に延びています。
それまで見てきた建築の精緻な装飾はありませんが、
武士らしい強さが感じられる、魅力ある空間です。

画像 j0231toshog51.jpg
(左)「奥社」は、これまでの空間に比べると、
 軸の強調や派手な装飾もない、墓所らしい空間です.
(右)銅製の宝塔は1683年(元和3)の再建です.
 以前の宝塔は、高さ8m弱の石造でした.
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「奥社」は、これまでのような積極的に造形した空間ではなく、
記念性を素直に表した墓所です。
宝塔の周囲には、墓所らしい独特の雰囲気があります。
他から切り離された、静寂な祈りの空間です。

001015/090728
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