建築再読-J.03 新宿NSビル

□□□□□□□
建築再読-J.03 新宿NSビル
「都市の広場となる吹抜空間」
定説を外れた異端の視点で自由に想像して読み返しています.
□□□□□□□
新宿NSビル
 /日建設計/東京都新宿区/1982年[昭和57]
□□□□□□□
画像

 Google Earthの
 画像です.

 新宿NSビルは、
 都庁の南隣りに
 立地しています.
画像

 新宿センタービルから
 撮影した写真です.

 画像の中央がNSビルです.
 その右隣は都庁第二庁舎、
 手前は京王プラザホテルです.
 NSビルは、この付近では
 おとなしい方の外観です.
画像

 メタリックな表面が周辺を映して
 います.
 EVシャフトのレインボーカラーは、
 虹の配色が途中から始まり途中で
 終わっています.
 NSビルは、30階/地下3階建て、
 高さは134mです.
 「NS」とは、事業主の「日本生命」
 と「住友不動産」のイニシャルです.
□□□□□□□
ビルといえば、表情のない単純な「箱」が一般的ですが、
近年は、お洒落で個性的な顔立ちのビルも目立って増えました。

NSビルは、近年のビルにしては、珍しく単純な「箱」に見えます。
特色ある形の都庁舎の傍にあるので、ますます目立たない存在です。
しかし、ツルンとしたメタリックな表面に周囲を映して建つ姿には、
逆に、何か意味がありそうな気がして興味が持たれます。

画像

 1階の吹き抜けホールは
 柔らかい光の空間ですが、
 薄暗い空間でもあります.
画像


 30階分の「吹き抜け」の下にいると、
 自分が「井戸の底」のような印象が
 ないわけではありません.
 しかし、ビル街の通りを歩きながら
 建物と空を見上げた雰囲気に似てい
 るので、妙な違和感はありません.
□□□□□□□
1階は「吹き抜け」の大空間ホールです。
床面積の3分の1以上が、一気に最上階まで吹き抜けています。
効率優先主義の立場からみれば、これは面積の大変な無駄使いです。

「吹き抜け」は約130mの高さがありますから、
さすがに1階ホールまでは十分な光は届かず、やや薄暗く感じます。
それに、閉所恐怖症気味の人には「井戸の底」にいるような印象を
持たれるかも知れません。

さほど良い効果が期待できないのに、敢えて大きく吹き抜いたのは、
それなりの理由があるはずだと思います。
それは、話題性を集めることが目的ではないと思います。
商業主義的な妙な圧迫感が「吹き抜け」に感じられないからです。

この「吹き抜け」には、植栽もなくベンチも用意してありませんが、
何となく落ち着いた安心感があり、集いの場の雰囲気があります。
「広場」のイメージが「吹き抜け」に暗喩されていると思うのです。
そうした都市と市民に向けたメッセージが造形されているのです。

画像 J0307NSbuild007.jpg
 29階の空中に架かるブリッジです.
 通路というより、「吹き抜け」を見るためのギャラリーです.
 見下ろすと、EVシャフトの凸凹が独立したビルのように見えます.
□□□□□□□
この「吹き抜け」は、単純に吹き抜けた直方体のボイドではなくて、
周囲も上部も壁面が凸凹しています。
それは、低・中・高層用のエレベーターシャフト群が、2ヵ所、
「吹き抜け」に突き出ていて、それぞれに高さが異なるからです。
ビル外観の、単純立方体の平滑な壁面とは対照的です。

中・高層用シャフトのEVホールは、途中階の部分は貸し室です。
低・中層用シャフトの最上階部分には会議室が設けられています。
会議室には、透明な二重の円筒形ガラスの天井が被せてあります。
その天井は、雲にもカマボコのようにも見える、特徴ある形です。

画像 J0309NSbuild009.jpg
 エレベーターシャフトは、オフィス街のビルのように見えます.
 雲形の天井はビルの屋上のように見えます.
 空中ブリッジから見ると、都市を上空から見下ろしているような
 感覚があります.
□□□□□□□
この特徴ある形の天井は、EVシャフトの立上がりのピリオドを示す
サインのように見えます。
そして、EVシャフトを一つの独立したビルのように見せています。
それが「吹き抜け」の周囲に、高低様々に4ヵ所あるのです。

その景観を空中ブリッジから見ていると、空中から都市のビル街を
見下ろしているような感覚がしてきます。
ブリッジは、29階フロアのショートカットの設備であるよりも、
「吹き抜け」を都市空間のように見せるためのギャラリーなのです。

「吹き抜け」が囲む「想像のビル街」には、市民に代わって都市の
主役となった車両交通がありません。
そこには、自由に歩行する人々と大きなオブジェがあるだけです。
時々、屋台のような臨時のイベント施設が出ることもあります。
つまり「想像の都市」は「広場」のような空間なのです。

凸凹した「吹き抜け」に「広場」のような都市空間を想像すると、
NSビルの無表情な外観の平滑な面は、現実とは逆になりますが、
「想像の都市」の裏面であるように思われてきます。

画像


 基準階平面は、2つのL字形平面を向かい合わせた構成です.
 四隅にある凹んだコーナーは、その屈曲点と結節点に見えます.
 L字形平面を線形に延ばすと、都市のビル街が想像されてきます.
□□□□□□□
NSビルは、「吹き抜け」を囲むように、2つの同形同大のL字形の
オフィス空間をロ字形に組んで構成した平面形です。
その四隅に、凹んだコーナーがあります。
凹みの小さいコーナーはL字形の「屈曲点」のように見えます。
他方の凹みの大きいコーナーは、L字形をロ字形に組み合わせる際の
「結節点」のように見えます。

逆に、ロ字形を2つのL字形に分解し、L字形をI形に延ばすように
想像すると、道路を挟むオフィスビル街がイメージされてきます。
つまりこの「吹き抜け」は、外部のビル街を反転して内部に凝縮した
空間であるように思われるのです。

画像










 a=実際の空間.  b=想像の空間.
・虹色のEVシャフト...天空高く延びている空間.
・「吹き抜け」...外部の都市交通空間を「集いの広場」に反転した空間.
・外界を映す外壁面...光を放射する鏡面.
...のようにイメージされます.
□□□□□□□
その道路を反転して想像した空間には、車の通行はありません。
人が自由に集まる安全な「広場」のような空間です。
最上階まで届く「吹き抜け」の天井は「広場」の「空」なのです。
そうした空間造形においては、1階ホールまで大量の光が届くか
どうかは、さほど重要な問題ではないと思います。

画像










 「広場」にも「吹き抜け」にも、上下のフロア間の
  コミュニティは必要です.
□□□□□□□
人の集う「広場」には、「見る見られるの関係」が必要です。
「広場」にいる人と、周囲の建物の窓やバルコニーから顔を出す
人との、気持のやり取りができることが大切なのです。

「吹き抜け」も同様に、最下階にいる人と上階にいる人との
コミュニティがあってこそ、空間が活きてくるのです。
「見る見られるの関係」のない広場は、ただの空地に過ぎないし、
意思疎通のできない「吹き抜け」は単なる「穴」でしかないのです。

画像









ホールからは上階の人を判別しにくいのですが、上階からは
ホールの様子を見ることができます.
「見る見られるの関係」は不完全でも、「広場」のイメージは
持ち込まれていると思います.
□□□□□□□
NSビルの「吹き抜け」は、30階分の高さがあります。
ずっと上の方の階との直接的な意思疎通は不可能です。
しかし、どの階からもホールの状況は見ることはできます。
特に、空中ブリッジは、ホールを見下ろすギャラリーとして
設定してあるようなものです。

表情の詳細は見えなくても「見る見られるの関係」は「吹き抜け」に
持ち込まれていると思います。
この空間には「広場」のイメージが込められていると思うのです。

そうした人の集う空間があると、効率優先の無味乾燥になりがちな
オフィス生活は、より豊かなものになりそうな気がします。
面積効率は低くても、逆に仕事の効率は高くなるように思います。

設計者(チーム)の計画意図がどうだったのかは知りませんが、
この「吹き抜け」は、ただの「穴」ではないように見えるのです。
「都市空間」の主役は、車両交通や情報流通ではなくて、
元々は「市民」であったのだという当り前の概念を思い出させる
空間装置だと思います。

NSビルは、そうしたイメージの誘いを強要せず、何となく自由に
想像させています。
この「吹き抜け」の存在を不思議に思うことが、想像の機会を
作っていると思います。

画像










 現実の都市の光は、ビルの表面を通過して「反転のエネルギー」の
 「吹き抜け」に入ります.
 その光は「集いの場」の意味に変換されて反転し、ビルの外壁面
 から都市に向かって逆放射されているように想像されます.
□□□□□□□
ビルの北東に、虹色に塗装されたEVシャフトが突出しています。
実際の虹の色は、アーチの外側は紫で内側は赤ですが、
このEVシャフトは下部は緑、上部は黄色に彩色してあります。
その途中から虹が始まるような色使いは、虹が上下に連なっている
ように想像させます。

実際はこのビルは周辺の高層ビルよりも背が低いのですが、
虹色のEVシャフトが、周囲よりずっと高くそびえ立っているように
想像させているのです。

NSビルのメタリックな外壁が周囲を映して建っている様子は、
高くて大きな四角柱の「鏡」が立っているように見えます。
その内部には、外部の都市を「想像の集いの広場」に反転して映す
「吹き抜け」スクリーンを抱えています。

J0315NSbuild0005.jpg








 「吹き抜け」のブリッジを通る時、わずかな揺れを感じます.
 その一瞬、都市の上空を浮遊しているような感覚があります.
□□□□□□□
その形態は、内部が空洞の「鏡」の円筒を想像させます。
外側は凸面鏡で、内側は凹面鏡の円筒です。
そして内部の空洞には「反転のイメージ」のエネルギーが内包して
あります。

その外側の凸面鏡に入射した現実の都市の光は、実際は物理的に
外に反射しています。
しかし、想像では、光は内部まで届いて、凹面鏡の「吹き抜け」で
「人の集う広場」の意味に変換されているように思われます。

そして「反転のエネルギー」が、変換した想像の光を、外の都市に
向かって逆放射しているようなイメージが持たれてきます。
NSビルは、新宿の街を「集いの空間」であるように照射している、
高くそびえる燈台のように見えるのです。

001220/090819
□□□□□□□

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント