雑観/世相-42 演奏家の顔芸

変人の暮らしと、少々毒のある雑観です.

□□□□□

TVやネットのYoutubeで音楽の演奏に聴き入っている時は、私はその

曲に合わせて、様々な情景を自由に思い浮かべています。

故郷の景色や、懐かしい思い出、抽象的な映像など、様々なシーンと

音楽の共演を、私なりに楽しんでいます。


しかし、途中で興醒めする時があります。

演奏者、特にソリストに多いのですが、気の毒なほどに切なく悲しい

表情を(演技で?)見せながら演奏する時です。


42-1.jpg

 (註1)

 終始この表情で演奏されると、

 視聴に耐えられなくなります.

 失礼な物言いして、彼女にも

 ファンの方にも申し訳ないの

 ですが、よく練習されてきた

「顔芸」だと思います.


□□□□□

「そんなに辛くて悲しいのなら、無理して演奏しなくてもいいよ」と

思って、曲を聴く余裕がなくなってしまうのです。


ピアニストの切ない表情は、ファンにとっては堪らない「芸風」かも

知れませんが、私には余計な「見せ方」なのです。

却って雑念が湧いてきて、聴きたい気持ちが失せてしまいます。


この「顔芸」を見て、「このピアニストは"痔"を患っていて辛いのか

な...」と揶揄気味に思うこともあります。


終始無表情だったり、ヘラヘラして演奏されるよりマシなのですが、

痛々しい表情を見せられると、私まで辛くなって、自由にイメージを

楽しむことができなくなるのです。


42-2.jpg

 (註2)

 歓喜の曲想の場合は、どの

 ような満面笑顔になるのか、

 想像してしまって、演奏を

 聴く余裕が無くなります.




□□□□□

演奏者を見ながら音楽を聴く場合は、ステージや演奏者の見え方は、

聴衆の鑑賞の質に大きく影響します。


クラシックの場合だと、演奏者の服装は、Tシャツ・ジーンズよりも、

コンサート・ドレスが圧倒的にマッチします。


高度な技術をインプットされたロボットの演奏よりも、その演奏者に

しかできない仕方で本気の演奏を聴く方が、感動が伝わると思います。


確かに、演奏会のチケットは、「聴こえてくる音」よりも「演奏者の

見やすさ」を重視して、座席を選択する傾向が強いようです。


42-3a.jpgスクリーンショット 2020-05-07 17.03.21.png42-3b.jpg








(左/註3)(右/註4) どちらも超有名な演奏家です.「この演奏は私の占有

 する世界なので、あなたがこの曲の世界に入る余地はありません」

 と、深い視聴を拒否されているような、気がしないでもありません.

□□□□□


しかし、「演奏者の見え方」が、「曲の響き」よりも派手に目立って

くると、曲を聴いて映像を想像することができなくなります。


音楽の楽しみ方は、人それぞれの仕方でよいと、思うのですが...。

私の場合は、楽曲と映像イメージは不可分なのです。


演奏者だけが自己陶酔して見せても、必死で頑張って見せても、苦痛

に耐えて見せても、魅力を感じることなく、興醒めするのです。


演奏の「見せ方」も、演奏者がその曲の感動を聴視者に伝えるために

必要な表現要素なのかも知れません。

その「見せ方」には、容姿、自己陶酔、表情、パフォーマンスなど、

様々あると思います。


それでも、切なく悲しく辛そうな表情で演奏する「見せ方」は、私は

直視できず、曲を聴く気持ちは雲散霧消します。


42-4.jpg

 (註5)

 リストの超絶技巧演奏を

 ちゃんと聴いている人は

 いるのでしょうか...

 でも、これもコンサート

 の一つの在り方なのかも

 知れません.


□□□□□

演奏よりもパフォーマンスを優先するソリストはいないと思いますが、

その両方を見事にやってのけた音楽家は、過去にいました。

フランツ・リスト(Franz Liszt/1811-1886)です。


長身(185cm)のイケメンで、煽情的な仕草を見せられ、ピアノ演奏の

超絶技巧を聴かされると、19世紀の貴婦人たちは熱狂したそうです。


彼は、ピアノの前に座ると、サラッと長髪をかき揚げます。

しばらく瞑想して後、悠然と鍵盤に手を置きます。

やがて陶酔した面持ちで、情熱的にピアノを弾き飛ばします。


そのカッコ良さを見て、泣いたり失神する貴婦人もいたそうです。

リストが汗を拭いたハンカチを奪い合い、追っかけもしたそうです。

当然、彼には不倫や駆け落ち、多くのスキャンダル話が付き纏います。


42-5.jpg


 (註6)

 この風体で、演奏技術も

 作曲も音楽指導もトップ

 クラスです.

 上流階級のご婦人たちが

 夢中にならない訳があり

 ません.



□□□□□

これだけ上流階級のご婦人たちに人気があれば、周囲の音楽家たちは

この「ピアノの魔術師」に嫉妬して、パフォーマンスをコキ下ろすだ

ろうと思うのですが、実はそうではなかったようです。

ほとんどの音楽家は、彼の演奏の感性と技術を絶賛していたようです。


ベートーベンも、彼の音楽的才能を認めました。

シューマンも、リストの「演奏と、その見せ方」を賞賛しました。

ただ、密会に留守中の自宅を使われたと知ったショパンは、リストの

友人らしからぬ背徳行為に激怒したそうです。


42-6.jpg

 (註7)

 超辛い唐辛子「死神」を

 食べて、涙して演奏する

 ファゴット奏者.

「感動」ではなく「辛い」

 涙顔です.


□□□□□

演奏中に涙を流す様子は、パフォーマンスとしての「演奏の見せ方」

なのか、あるいは曲に共感した「感動」なのか、大抵は見れば察する

ことができると思います。


たとえば、「キャロライナ・リーパー」という非常に辛い(ハバネロの

5倍以上)唐辛子を食べて演奏した「デンマーク国立室内管弦楽団」の

イベント例があります。


メンバーは辛くて号泣状態になりますが、見事に演奏しています。

しかし、演奏は感動的ですが、曲に関係なく泣いているのです。

「辛さ」と「感動」の違いは、見れば何となく分かります。


42-7a.jpgスクリーンショット 2020-05-07 17.03.21.png42-7b.jpg








(左右/註8) 主役のバイオリン奏者よりも、脇役のオーボエ奏者の方が

 目立ってしまったコンサートでした.

□□□□□


当然、本当に感動して、涙を流しながら演奏した例もあります。

「オランダ交響楽団」が、映画「シンドラーのリスト」のテーマ曲を

演奏中、オーボエ奏者の女性が途中で泣き出しているのです。

我を忘れて泣いていますが、それでも最後まで演奏しました。


ソロ・バイオリンの美女「シモーネ・ラムスマ」の演奏も逸品ですが、

辛そうな表情の「演奏の見せ方」(または「芸風」)は軽く見えます。

対して、オーボエ奏者の「感動」の「涙顔」は、映画の意味を語って

いるように見えます。


余計な話ですが、私は「シンドラーのリスト」のソロ・バイオリンは、

「イツァーク・パールマン」の方が好きです。

彼がユダヤ人だからでしょうか、重みを感じます。


42-8a.jpgスクリーンショット 2020-05-07 17.03.21.png42-8b.jpg








(左/註9)「ポゴレリチ」の奈良-福寿院客殿での演奏(2018年)です.

(右/註10)「川上昌裕」の演奏には派手な「見せ方」はありません.

□□□□□


安っぽい「顔芸」をしない演奏家は、少数ですが、確実にいます。


たとえば「イーヴォ・ポゴレリチ/Ivo Pogorelich/1958-」も演奏を

観ながら聴くことのできるピアニストです。


若い時期は、独自のショパン解釈や独創的な演奏などで物議を醸した

せいか、大変な苦労があったようです。


TVで観た60歳の演奏では、真摯にショパンに向き合う姿勢が素敵に

見えました。

語るような彼には演奏には、「見せ方」は必要ないと思いました。


「川上昌裕/1965-」も、「顔芸」を必要としないピアニストです。

普段と変わらない表情で難曲を演奏します。


特に「カプースチン」の曲では、超絶技巧を駆使しつつ、発色の良い

抽象絵画や風景画をイメージさせてくれます。


201110

□□□□□

以下の画像を加工しています.

(註1)「ららら♪クラシック」

 https://tsuiran.jp/word/37765/hourly?t=1601643600

(註2)「CD試聴記」

 http://www.sam.hi-ho.ne.jp/t-suzuki/s_and_p/reviews.html

(註3)「youtube/中村紘子 トーク&コンサートVol.3 「ロシアの六月」」

 https://www.youtube.com/watch?v=KvRN_tS2tB8&app=desktop

(註4)「Beethoven:Cello Sonata No.3/Yo-Yo Ma & Emanuel Ax」

 https://www.youtube.com/watch?v=X9pivx91mVk

(註5)「チェリーピアノ」

 https://www.cherry-piano.com/posts/8041061/

(註6)「AFP」

 https://www.afpbb.com/articles/-/3120417

(註7)「m-on-music」

 https://www.m-on-music.jp/0000003626/

(註8)「Schindler's list - John Williams - NL orchestra」

 https://www.youtube.com/watch?v=YqVRcFQagtI

(註9)「PIOピアノ雑記帳」

 http://piopiano.blog.jp/archives/8149340.html

(註10)「N. Kapustin - Piano Concerto No.6 with Masahiro Kawakami (piano) 」

https://www.youtube.com/watch?v=t00R0AAMSTM&feature=emb_title

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント