変人の暮らしと、少々毒のある雑観です.
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12月を過ぎると、私は年賀状の図案を探すためにに、ネットで世界の
美術館を巡ります。
自分なりのテーマに合う絵画や建築の図案をデフォルメして、版画を
彫るのです。
それは、私だけの密かな楽しみです。
その絵画・建築探しの作業が楽しいので時間が掛かり、毎年、版画が
一応完成するのは年明けになります。
ちなみに、今回のテーマは「月日は百代の過客にして、行き交う人も
また旅人なり」(奥の細道/芭蕉)です。
絵画を探すと、「受胎告知」を多く見かけます。
ところで、どんな「受胎告知」の絵を見ても大天使「ガブリエル」が
女性に見えるのが、いつも不思議でした。
画家は、顔立ちや服装を女性のように描いているのです。
(左)(註01)「受胎告知の天使」/ヤン・ファン・エイク/1432年頃
(右)(註02)「受胎告知」/フラ・アンジェリコ/1443年
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しかし、キリスト教でもユダヤ教でも、「ガブリエル」が女性である
とは認めていません。
「優美な青年」だと説明しています。
だとすれば、美男子が女装しているのだろうか…と、不謹慎な疑問が
生じてきます。
公式には、「ガブリエル」は女性ではありません。
しかし、絵画表現に共通する特徴を考えると、「ブリエル」は女性と
してみる方が合理的である、と説明した解説もあります。
・昔は、女性の室内に入って会話できるのは、女性だけだった.
・ガブリエルは、女性そのものを表す百合を持っていることが多い.
・少女に妊娠したことを告げるのは、一般に女性である.
・ユダヤの習慣では女性の位置は男性の左側であって、ガブリエルも
常にイエスの左側に位置している.
・ガブリエルは、流行の衣服を着ていることが多い.
(左/註03)「三大天使とトビア」/ボッティチーニ/1472年
(右/註04)「受胎告知」/レオナルド・ダ・ヴィンチ/1475年
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歴史的に多くの画家が「ガブリエル」を女性として表現してきたのは、
それが昔から社会一般の通念だったからなのかも知れません。
教会の意思に反しますが、やはり、「ガブリエル」を女性として見て
「受胎告知」を鑑賞してもよいように思います。
すると、「受胎告知」の場面で「マリア」が驚きの仕草を見せるのは、
「受胎を告知された」ことが原因なのだと、素直に理解できます。
(左/註05)「受胎告知」/ボッティチェリ/1489年
(右/註06)「受胎告知」/ムリーリョ/1660年
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天使といえども男性が、いきなりプライベート空間の目前に現れたら、
嫁入り直前の娘なら誰だって驚愕するに違いありません。
しかし「マリア」は、見知らぬ男性が無断侵入した非礼に驚き慌てて
いるのではないのです。
神の子を「受胎」した、非合理と名誉に感動しているのです。
「ガブリエル」が女性を意味する百合を持って舞い降りてきたのは、
「マリア」に花を捧げるためである、という解説が多いようです。
しかし「ガブリエル」は、「自分は女性であって、結婚を控えた女性
の前に突然侵入した不埒な男性ではない」ことをアピールするために
百合の花を見せている、と考えることの方が道理的だと思います。
つまり、「ガブリエル」を女性にみる方が、違和感なく「受胎告知」
を観ることができるのです。
私のような素直でない者が、「女装か...?」などと、よけいなことを
詮索せずに済むのです。
201220
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(註01)「ウィキペディア」の画像を加工しています.
ja.wikipedia.org/wiki/ガブリエル
(註02)「remove」の画像を加工しています.
http://remove.jugem.jp/?eid=223
(註03)「不埒な天国」の画像を加工しています.
http://albero4.blogzine.jp/paradiso_irragionevole/2011/09/tobiolo-e-gli-a.html
(註04)「りらりブログ」の画像を加工しています.
http://rirari.at.webry.info/200705/article_30.html
(註05)「西洋美術史年表」の画像を加工しています.
http://www.ne.jp/asahi/art/dorian/B/Botticelli/Botticelli.htm
(註06)「ムリーリョ 受胎告知」の画像を加工しています.
http://art.pro.tok2.com/M/Murillo/v001.htm
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